サステナビリティの推進には無限の可能性がある
(マラ・ホフマン)
ARTICLE
5 May 2019
マラ・ホフマンの作品は、彼女が自ら創造した洋服をはるかに凌駕したものです。ホフマンのデザイン哲学は、ファッションの未来を見据えた進歩的な取り組みを示しています。
ホフマンは、「fashion funeral(ファッションの葬儀)」と銘打った2018年9月の最新コレクションに代表されるような、サステナブルなファッションへの取り組みに特に力を入れています。これは、自分のブランドにとって、そしてできることなら、この業界にとってのサステナブルな未来を支持するという彼女のビジョンを表明しています。
自分の意識を高め、強い責任意識を持つための努力は、ホフマンの私生活のスタイルからはじまっています。自身の洋服を選ぶときには、白のボタンダウンシャツとパンツなど、手入れがしやすく、デイリーユースとして気軽に着られるものを選びます。
アイリーン・フィッシャーや、ステラ・マッカートニー、パタゴニアなど、どのブランドも、ずっと昔からこの世界に存在してきた無数の先人たちと同じように、ポジティヴで無駄が少ない未来に影響を与え続けることに尽力し、私のインスピレーションの重要な源泉となりました。
ホフマンが買い物に行くときの習慣は、業界におけるサステナビリティに対する認識が高まってくるのにつれて、変化していきました。
「自分がすでに持っているものが重荷になってきました。圧迫感すら覚えはじめ、そこから自分の持ち物や着る物との関わり方が変わっていきました」。彼女は、買い物する量を減らし、ヴィンテージ品の購入に力を入れるようになりました。彼女の今のお気に入りはLevisのヴィンテージ・ジーンズで、ほとんど毎日はいているそうです。
この考え方は、ホフマンのデザイン哲学にも広がりました。彼女は常に、タイムレスなデザインで、長い間着られる服であることを重視してきました。ホフマンは「こんなものを作って、顧客が喜ぶだろうか? それどころか、腹を立てているのではないだろうか?」と、立ち止まることもあるそうですが、なにより重要なのは「この服は特別だと言えるか?」と常に彼女が自分に問いかけている点です。
彼女の創作は、ゆっくり時間をかけて進められることが多く、そうして出来上がったマラ・ホフマンの洋服は、何らかの目的があって生まれています。
彼女が重視しているのは、このマラ・ホフマンとしての考え方。「全ての人が、サステナビリティという同じ目的のために集まり、同じミッションを掲げるあろう」という、マラ・ホフマンとしての考え方を大事にしています。これはもっと広く、業界へと向けられたアレゴリー(比喩)になると言っていいでしょう。
ホフマンは、サステナブルな繊維の将来というテーマに、真剣に取り組んでいます。そんな彼女にとって、再生可能なコットンや、繊維から繊維へのリサイクルなど、革新的な新しい技術が登場しているのは明るい材料になっています。このおかげでマラ・ホフマンのブランドはもちろん、より広く、この業界にとってさらに多くの選択肢が与えられたからです。
「サステナブルな代替品が登場したのはとてもうれしいこと。デザインする上で、選択肢による制約がとりはらわれました」。例えば、テンセルTM Luxeという新しい繊維が発売されたことで、ホフマンと、彼女のブランドにとって、「やった!」と言える瞬間が訪れました。それは、この繊維には、シルクに代わる、より環境に優しい繊維となる可能性があるから。
「私は、テンセルTM Luxeというシルクの代わりになる最高の繊維を手に入れました!思い描いていた手触りを実現した、最も環境に優しい素材なんです」
テンセルTM Luxeのようなサステナブルな最新繊維の未来を楽しみにしつつも、一方でブランドに対してのアウトプットを求めるペースが相変わらずサステナブルなものではない点を警告しています。長期にわたってサステナビリティが実現されるためには、ファッションやトレンドが減速する必要があると、ホフマンは主張します。
「いつでも私たちは、より多くのものを作り出すことによって、時代遅れのシステムにエサを与えてているわけです。廃棄物と汚染の問題には改革が必要ですが、なかなかすぐには解決しない。デザイナーの観点からも、もっと時間が欲しいです」。
ホフマンは、思いやりのある服を作ることに力を注いでいます。そして、常に新しさを必要とすることにはもう目を向けず、むしろ質が高く長持ちするような、一品もののコレクションに焦点を絞っています。
マラ・ホフマンのブランドは変化を起こすためのビジョンを具体化するものです。サステナビリティは、ホフマンが特に重視するブランド・メッセージの一つです。
「少なくとも今は、サステナビリティを実現できるレベルではないブランドを作っている暇はありません」。彼女は、サステナブルな未来に向けて努力し、大きな期待を抱いています。「可能性は無限です。私たちは、そんな方向に向かっていると思います。本当にそう感じるのです」
マラ・ホフマンのインタビュー動画のパート1は、こちらをご覧ください(動画は英語で再生されます)。